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管理人の日記/2007年03月13日/胴体着陸 #blognavi
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Dungeon B7 Ice Spring - 1 スペルに光が満ちて、テレポートが発動する。 同じくして、ドラゴンのブレスが放たれた。 眩しすぎる光。 遠く聞こえる衣擦れの音。まだ麻痺してうまく音を拾えないシンの耳は、それが名前を呼ぶ声だと分かると急激に覚醒した。 そして、手の届く位置に転がるステラを見て安堵し、あたりを見回した。ルナマリアもレイも倒れてはいるが息はある。そして、そこが今だ地底の凍った湖の上だと死って愕然とした。さっきまで対峙していたドラゴンの背が見える。 「そっ、そんな・・・」 テレポートできなかったのだ。 「ちくしょうっ! ここで終わりかよっ」 上半身を起こしていたシンが、氷の地面に拳を打ち付ける。いや、打ち付けるはずだった。 「そうでもないさ」 シンの拳を掴んでいる氷のように冷たい手に、ばねのように起き上がって見上げる。 「無茶苦茶寒いな、ここ」 「アンタ・・・アスラン?」 「俺のやったスペルカードを使っただろう。いきなり転送されたぞ」 少々悠長に話す相手は、ノームの村のアイテム屋の主人。あまりに暢気に笑われるから、シンは一瞬、この場の状況を忘れた。 ドドォンとドラゴンが頭をめぐらして、ハッと我に返る。 「話し込んでいる時間はないな」 「何をいまさらっ!」 シンの目線になるように彼が膝を付く。この切羽詰った状況で、見つめられた瞳から目を逸らすことができない。蒼い髪も珍しいけれど、彼の瞳だって不思議な色だった。グリーンアイズ、だけど、その虹彩の奥で火花が散ってそうな。 「さて、シン。ここにアイテム屋います。君がすることは何だ?」 アイテム屋。 そうだ、この人はアイテム屋だ。 アイテム屋ですることなんて決まっている。だったら何を買うか? 「上の階で手に入れた金の腕輪がある」 だけど、買えるだろうか? だって、それはアイテムじゃない。 「それで?」 「リバースの発動」 例え薬草で傷口を治しても、アイテムで体力を回復するにはちょっとは時間がかかる。 もう一度、このダンジョンにチャレンジするなんてとんでもない。ここまで来るのに大変だったのだ。 だから、時を戻す。 時間は戻らないけど、過去の自分に警告を出すことはできる。 上級の術者じゃないと難しいそれ。だけど、この人はテレポートのスペルをわざわざカード化できるほどのアイテム職人だ。 「ここに降りる前の俺たちに、ドラゴンがいることを伝えたい」 「驚いたな。再挑戦するつもりか」 そういいつつ、彼は笑っていた。まるでそれを望んでいたかのように、手元のカードにスペルを書き込んでいる。無造作にスペルブックを取り出すことから、腕は確かな職人なのだと思い出す。 「いい瞳だ」 出来上がったカードを受け取り発動させると、シンの意識が違う現実にシフトした。最後に交わした言葉は既に、葬り去られるべき時間軸に載って、頭から掻き消える。未来が変わるのだ。 「ここまで来たの、お前が初めてだ」 氷の地底で、彼のグリーンの瞳だけがシンの記憶の片隅に残った。 Dungeon B7 Ice Spring - 2 「遺言どおり、ドラゴンかよっ!」 「ステラっ、行くぞっ!」 ゴーレムの最後の言葉に驚いた一行は、急いでできるだけ対ドラゴンとなるように万全の装備を整えた。 スピードブーツを履いて、動きを軽くした前衛の二人が、ドラゴンのブレスが来る前に切りつける。いつもより早く走れ、高く飛べる。 シンの一撃にドラゴンが膝を降り、ステラの一撃で頭を振る。 間髪おかずにレイの矢が打ち込まれる。 炎のブレスも来るタイミングさえ掴めれば直撃を食らわなくて済む。 氷の中の光る瞳がぼうっと光を放っている。それは美しい赤い色で、まるで戦っているリトル・レッドドラゴンのよう。 攻撃を除けながら、鋭い突きや横殴りを除け、少しづつ、お互い消耗しながら戦い続ける。 「このままじゃ、拉致があかないわっ」 いずれ、回復アイテムが切れて窮地に陥るだろう。それまでに目の前の敵を倒せるかどうか分からない。誰も、リトルドラゴンと戦ったことなどなかったのだ。シンとステラは言うまでもなく、ルナやレイまで。 「無茶言わないでヨ! ドラゴンが本当にいるなんて信じられる?」 「ゴールドドラゴン以外、死に絶えて久しいんだぞ」 「じゃあ、これは何なんだよ!」 話しながら弱点を探るが、そんなもの見つかるはずがない。 ドラゴンの動き、ブレスの方向、羽ばたきなど、注意して見ても、何の規則性など見つけることなどできず、その場その場の攻撃の対処をするだけ。あとは僅かな隙をついて切りつけるがどれだけ効いているのか分からない。 最初は結構いけると思ったのに。 膝を着かせるほどのダメージを与えられたのは最初だけで、今は、とんと効いているのか怪しいものだ。シンはドラゴンを見上げ、睨みつける。既に息があがり始めている。 「白い光・・・」 「はあっ、何言ってんだよ!?」 ステラの独り言が聞こえて、思わず聞き返していた。目の前のドラゴンは真っ赤な鱗を持っている。レイが打ち込む矢も氷の属性をつけて、少しでもダメージを増やせるようにしているくらいだ。 ブレスが来る。 デ、デカイ! 今までになく、強大なブレスにシン達は一気に壁際まで押しやられてしまった。 「色、変わった」 「だから、何のっ」 ソードを構え直すシンが、ステラを庇うようにドラゴンに向き直る。 「瞳のよ。氷の中の光・・・色が変わってるじゃないっ!!」 ルナマリアが急に叫ぶ。 さっきまで白かった光は、今は緑色で、そう言えば、始めてみた時は赤色ではなかったか。 シンはひらめき共に切りかかっていた。 ドラゴンがガクリと体制を崩す。 「これって・・・つまり」 「氷の中の瞳の色によって、ドラゴンのコンディションが変わるってことだ」 赤や緑の光の時に攻撃がよく決まる。さらに言えば、ダメージの大きさから言えば赤色の時がいい。 だって、おかしいだろ? こいつは小さいけれど、レッドドラゴンなんだ。 普通に考えれば、赤い光の時に強くなって――― ちょっと、待て。 それで行くと、ものすごい前提が崩れないか? シンの直感を代弁するように、レイが告げた。 「見た目に惑わされるな。こいつはレッドドラゴンじゃないっ!」 赤い光の時に弱体化し、炎の属性を纏ったシンのソードで大きなダメージを被る。 それはつまり、目の前のドラゴンが氷の属性を持つという事だ。 そうと分かれば、対処の方法もある。 もしかしたら、万が一がありえるかもしれない。 次の赤い光までシン達はひたすら力を温存し、準備を整えてチャンスを待った。 ルナがファイアボールのスペルを唱え、シンのソードとステラのナイフに炎の属性をつける。レイが炎の矢を放ち、赤い光の時、一行は一斉にドラゴンに攻撃を放った。 レイとルナマリアがひたすらサポートに回って、ステラとシンを補助スペルで強化する。 氷に対する防御を上げ、俊敏性を上げるスペルをかける。 「シン! 止めだっ!!」 大きくジャンプして、振り下ろされるソードがドラゴンの頭に突き刺さる。 その瞬間、ピシッと赤い角に亀裂が走った。 ついに、リトルドラゴンが力尽きて膝を折る。 竜の羽を力なく氷の湖に打ち付けて、地響きが起こる。 振動が収まった時、ドラゴンの瞳から徐々に光が消えていった。 そして、リトルドラゴンが息絶えると、湖の氷が溶け出し始めたのだ。 慌てて、上の階に避難するシン達は、途中の階で見つけた宝箱を改造して即席のボートを作る。それに乗ってそろそろと湖に繰り出した。 「この湖・・・このドラゴンが凍らせて、あれを守っていたのね」 ドラゴンの瞳が湖の中で光っている。 鋭いほどの青い光。 湖面に飛び込んだシンが、湖底で光る瞳に手を伸ばした。 ギョロリと瞳が瞬くのを知らずに。 シンはドラゴンの瞳を手に入れた。 続く 情景とかくどいですか。ああ、もっとうまく話がかけるようになりたい! なにわともあれ、ドラゴンの瞳ゲットです。
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Level 21 「あうっ!」 刃が届く直前で透明な壁に跳ね返されて、ステラが部屋の壁にぶち当たる。 シンの時もそうだったが、己の周りに空気のバリアでも張っているかのようだ。 「女の子だからって、次はないよ」 微笑を湛えて、軽く手を一振りする度に、空気が割け、部屋の中のものが寸断されていく。 シンの髪も、ルナの服も余波を食らう。 狭い部屋がお城の大広間のように、時間が間延びしているように感じられるのに。 何もできずに接近を許すことほど口惜しいものはない。 腕の力だけでシンが這い出ても、よくなる方向に行くわけじゃなかった。 「ああ、もうちょっと何かないの!?」 「お前だって、メイジだろっ」 両手をひらひらさせて、メイジのトレードマークの杖がないことを見せる。 「まだ、見習よっ! カード無しじゃ魔法の発動なんてできないわっ」 ルナマリアがシンの荷物を取り上げて中をさばくるが、山のように買い込んだ回復薬や非常食のおかげで使えそうな物が見つからない。 「作戦会議は終りかい?」 月の光を反射して、剣がきらりと光る。 「あったっ! スペルカード」 ルナが取り出したのはアスランから貰ったカード。 カードのスペルはやっぱりテレポートで、ルナがスペルを唱えると、部屋の外のバルコニーの空間が口を開けた。 しかし、ステラが反対側の壁際に倒れている。 「行くわよっ!」 引きずられるように崩れたバルコニーに踊り出て、石でできた小さな空中庭園の静寂を突き破る。 「待てって!」 ルナが手を掴むけれど、ステラを置いていけるわけなかった。ずっと一緒にペアを組んできたのだ。 一歩一歩近づいてくるキラがルナが発動した魔法を見て腰に下げた剣を抜く。 剣筋は見えなかった。シンは殆ど勘だけで、声を出して衝撃が飛んでくる方向を予想した。 「危ないルナマリアっ!」 咄嗟に突き飛ばしたが、間に合わない。 ルナマリアがシンの荷物もろとも床に転がって、右肩に痛みが突き刺さった。 「かはっ・・・」 剣を抜かれた時にも同じだけの痛みを感じて、シンは両膝をついた。左手を肩にやれば、生暖かい血で濡れていて、少しでも触れようものなら痛みが脳天を突き抜ける。 右手は痺れて、空気さえ神経を刺激した。 過敏な神経が、刃が空を切る振動を捉える。 見開いたシンの瞳に映る一振りの前に、ステラが飛び込んで来る。 ああ、ああ・・・。 自分が食らうはずの魔法の一撃が全て彼女に。 ナイフをもった手が、だらんとぶら下がる。 彼女の懐から零れた金の欠片がシンの目の前に落ちて、感覚のない手で拾い上げる。 いやだよ、ステラ。 ナイフは何でもないのに、スプーンやフォークを握る手はまだぎこちなくて、光るモノにすぐ伸びるまだ小さな手。それが、シンの目の前で、力なく揺れる。 つまらないものを見るように、刃を小さな体から引き抜いて血糊を払う。 ステラがぐらりと傾く。 月光の中、崩れたバルコニーを越えて、血の糸を引いてステラが夜の大気に消えた。 Level 22 「シン! テレポートのゲートが閉まる。早くっ!」 ルナの声もどこか遠くて。 鉛のように思い足。 ルナが必死にテレポートの空間に引っ張り込もうとしているのに、シンはただステラの消えた夜の闇を見つめる。すぐそこにゲートがあるのに、敵の大将がさして急ぐ風でもなく歩いて来るのは、そんなシンの様子を見切っているからだ。 最期の時を迎えるだけのシンに、ゲートの中から声が掛けられた。 「君は、ここで死ぬつもりか?」 全員が目を見張る。 いち早く動いたのはキラで、風のようにシンに迫り、閉じようとするゲートから伸びた手がシンを無理やり引っ張り込む。 氷のように冷たい手にシンはびくりと身体を震わせて手の持ち主の方を見る。 ゲートが閉じるのと、キラが剣を振り下ろすのとは殆ど同時で、剣の切っ先がすぱっと持って行かれていた。 「今の声―――」 切っ先が欠けたまま鞘に収めて、さっきまで空間が開いていた場所を掴む。バルコニーの石の床に落とされた紫色の瞳が、中空に浮かぶ白い月を見上げる。 「そんなはず―――ない」 もう一度、自分に言い聞かせるように掃き捨てる。 「幻聴が聞こえるほどガタが来ているってことかな、はは・・・もう時間がないんだ」 黒い手甲に覆われていない手に視線を降ろし、ピシピシとひび割れる程、拳を握り締めた。 「地図もドラゴンの瞳も取り逃した、か。ジュールの杖が駄目なら、まずはあの王から何とかしよう」 夜の闇にその声は吸い込まれて、廃城はおろか、シン達を待つエルフのレイにさえ届かなかった。 「ギルに報告、すべきだろうな」 ルナマリアと血まみれのシンがテレポートで消えたこと、シンのパートナーの少女が廃城のバルコニーから落ちたことを。 続く よし、今回は短いぞ。って、そんなことより、なんだかますます違う方向へ転がりそうな気配、えっ、バレバレですって? うーん、そうかも知れませんね。
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#blognavi 目の奥が圧迫される感じ。 瞼がはれぼったい感じ。 目の上が重い感じ。 四六時中、鼻がつーんとしている感じ。 早くも花粉症か!? 昨日からくしゃみが出始めて、今日、いきなり本格的になってきましたよ。あ~、だらけた生活送ってますからねえ、やばいですよね、今年ね~。ひどいことになりそうで・・・。アウチ。 今日は震災の日だけれど、ニュースはホリエモン一色ですね。何で今頃・・・と思ったけれど、どうしても、ああいう輩をギャフンと言わせたい連中がいるのかな。ライブドアの誰かがその蠢いている謎の勢力に買収されたと見た。 ライブドアの株式は半分が個人投資家という話だし、今日は全面安でしたね・・・。 カテゴリ [つれづれ] - trackback- 2006年01月17日 19 43 23 #blognavi
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#blognavi 雨水っても、冷たい雨で、床が冷たい冷たい。でも、梅の蕾は膨らんでるし、チューリップの芽は出てるし、バラの芽も日に日に大きくなってる?ような気がするこのごろ。 部下を守れない上司は駄目だ。 社員はパズルのピースか?それなりに勉強して形を合わせてきてるのに、どうしてそれを無視するようなことするのかね。また同じ部署の人が別の事業所に配置転換だ、もう、何人目? カテゴリ [つれづれ] - trackback- 2013年02月18日 21 21 44 #blognavi
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#blognavi 知らないうちに可決していたらしいじゃないですか、先週に! 草案は7月中、実施基準は10月だかに発表か・・・上場企業は大変だな。うちはんなもん関係無い中小企業だけどネ。 大体、内部統制とか言う前にやることあるだろよ、日本の企業はさ。特に中小は。日本の「商慣習」つう言葉を隠れ蓑に、ビジネスルールもあったもんじゃない。その変幻自在さが日本の底辺を支えていると言えばそれまでだけど、その無理のあおりを食らっている人も大勢いるわけよ。投資家やさ株主保護を謳う前に、こっちに目を向けて欲しいよ。 おおっ? ふらふらっとゴールに入りましたね。 カテゴリ [つれづれ] - trackback- 2006年06月12日 22 56 08 #blognavi
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#blognavi 忘年会で出ました。 忘年会が中華料理だったんです。でも、上海ガニが出たので、全部でお皿が6つしかありませんでした。そのうち炒飯とサンラータンなので、実質4。しかも、うち2皿が海老。うーむ、もうちょっと色々食べたかった。 二次会には行かなかったので、8時40分に家に帰れました。 カテゴリ [つれづれ] - trackback- 2008年12月03日 21 33 42 #blognavi
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#blognavi どうして・・・お父様。 どうして、わたくしではないのですか。 幼い頃からずっと背中を見上げておりましたわ。 お父様の願いを、声を、ずっと聞いておりました。プラントの未来、コーディネーターの平和のために歌い続ける覚悟ですのに。厳しい政治の話も、難しい議会の情勢もちゃんと理解しているつもりですわ。 わたくし、きっとお父様のお役に立てます。 必要ならわたくしが隣に立っていつも支えます。 それなのに、どうして、お父様はあの方のお話ばかり嬉しそうにされますの? わたくしが女で、あの方が男だからでしょうか? わたくしでは力になれませんか? 女としての幸せを捨てても、お父様の夢見る未来のために貴方の跡を継ぐ覚悟でしたのに、急に婚約をお決めになって。 彼がプラントを背負って立つ日が楽しみだなんて、どうか、おっしゃらないで下さい。 わたくしは・・・わたくしが貴方の娘。 カテゴリ [ネタの種] - trackback- 2006年03月14日 20 09 44 #blognavi
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青く輝く炎 2本のライトセーバーが交わる中心にシンは赤い閃光を突き立てる。力押しで全体重を傾けた。 「いい加減にっ」 話したおかげで口から力が抜けるようにシンのバランスが崩れたが、お構いなしにライトセーバを振り上げる。青の光がシンに迫る。 「思い出せよっ!?」 シンのライトセーバーより、彼のライトセーバーより早く、シンの左手が炸裂した。 パイロットスーツのヘルメットを思いっきり殴る。 「アスランじゃないってんなら、顔を見せろよっ」 その手で胸倉を掴み、剣を放り投げた右手で強引にヘルメットを外しにかける。 「何をっ!?」 シンの右手を青いライトセーバーが狙うが、掠っただけで、二人が二人とも体勢を崩した。勢いでシンの手から地球軍のヘルメットがすっぽ抜ける。 あんなに見慣れた藍色の髪じゃない、灰色が無重力に舞った。 間髪おかずにレベル1退避勧告。狭いスペースでさえ、轟音を立てて天地がひっくり返った。ブロックごとに分解して、引っ切り無しにサイレンと退避勧告が流れる。背後で扉の閉まる重い音。まだ非常隔壁が生きているのは二人に取って、まさに僥倖だった。急激に重くなる身体を絡ませながら、二人は壁に押し付けられたまま落下の瞬間を迎える。 衝撃ではじけ飛ぶ彼のバイザー。その下から現れる瞳はシンをいつも見つめていた色。 シンがいつも見ていた懐かしいグリーンだった。 轟音を立てて次々に火柱を上げ、形を変えていくヘブンズベース。 ちりじりになった地球軍は要塞を捨てて、月面基地まで後退した。 勝敗の決した戦場では大抵、略奪行為が行われる。しかし、こと宇宙空間においてはいたずらに破片を撒き散らし宙域を汚染するだけのその行為はあまり行われない。 残党狩りが行われるのみで、編隊を組んで母艦に帰る機影がほとんどだった。ミネルバからもヴォルテールからも帰還命令が出ている。直前までシンと一緒にいたイザークがなおも宙域に残ろうとしていた。 『イザーク、ちょっと待て。戦場洗いは俺たちの仕事じゃないって』 「うるさい、放っておけるかっ!」 崩壊する要塞の周囲を検分するように飛び、時折起る爆発を避けてまた近づく。その繰り返し。 『お前、隊長だろ?』 「ディアッカ、隊のことはお前に任せる! 臨戦体勢のまま待機。すぐに動けるようにしておけ!」 『まじぃ? まだやる気なのかよ』 白い機体から離れていく黒い機影とは反対に、イザークの機体が分裂するヘブンズベース要塞を周回していた。 ユニット構造になっていた要塞は分解してしまえば一つ一つはそれほど大きくない。密閉性を高めるためにそれぞれが独立して機能する。 シンが今閉じ込められているのもそんな空間の一つだった。 通常のユニットと違うのは何もエネルギーが補給されない有限の環境だと言うことだ。水はもとよりないし、エアーも切れればそれで終り。パイロットスーツから供給される空気にも限度があったから、もしもの時のために取っておくために、今はヘルメットのバイザーを上げて空間に残された空気を吸っていた。 ここに閉じ込められてからどれだけ時間が立っただろうか。 5・6時間は少なくとも立っていて、その間、二人の間に会話はない。 向き合って一言も言葉を交わさない静寂の時間に身を浸していてると、今、この宇宙で大きな戦争が行われている事が嘘のように思えてくる。きっと今も戦闘は続いているのだろうに、お互いの呼吸が聞こえそうなほど静かな空間では、シンとアスランかも知れない人物との二人だけの戦争がずっと続いていた。 片膝を立てて壁にもたれる姿はシンほど警戒していないように見えて、近寄れない雰囲気を纏っていてシンはずっとそこから動けなかった。 どうしてこんな事になったのだろう。 シンは湧き上がる疑問に、次から次にアスランの思い出が浮かんできた。随分といろいろな事があった。家族を亡くしてから初めて家族だと思える人だったのに。 フフ。柄にもなくシンは小さく笑い出していた。 僅かな空気を挟んで、少し揺れる気配が伝わってくる。 「アスランって奴、君のなんなんだ?」 何だと聞かれても返事に困る。 「えっと・・・先輩で、恩人」 本人を前にして話すような気恥ずかしさに、自然としどろもどろになる。 「そんなに俺と似てるのか? 今はどうしているんだ」 「・・・んだ。と・・・思う」 否定できない事実。何度も何度も夢に見た、惨劇の瞬間がまたフラッシュバックして強く目を閉じる。自分で刺したのだ。フリーダムの奴にも刺されて、普通に考えれば助からない。コーディネーターだからという一点に賭けていた。だけど、それも、もうどうでもよくなっていた。こんな形で彼がアスランであって欲しくない。 「アンタとなんか似てないよ。髪の色も違うし・・・あの人は違う」 いつもちょっと困ったように笑って、シンにお小言を言う。 作戦が成功すればよくやったと誉めてくれるけれど、あまり嬉しそうじゃなかったのを知っていた。戦場に横たわる兵士の死体をいつも悲痛な顔をして見つめていた。 「アンタとは違う」 アスランは死んだんだ。 記憶があってもなくても、あの人はもういない。 「一時休戦だな」 休戦となったシン達から遠く離れたコロニーで、評議会のデュランダル議長がヘブンズベース攻防戦の戦果の報告を受けていた。結果は上々。 『月軌道艦隊司令からの報告は以上です』 アルザッヘルまで後退した地球軍に目立った動きはなく、建て直しを計っているのだろうと軍参謀から通信を受ける。 「うむ」 手を組み、次の作戦の陣容を黙って聞く。 「その作戦、どこの立案かね?」 唐突に質問された画面の向こうの黒い軍服を着た男が、一瞬言葉につまる。 「我が軍の損失も考えてくれたまえ。人材は有限なのだよ」 ともすれば、敵を完膚までに叩きのめそうとする作戦に議長は苦い顔をする。地球軍に勝って独立を宣言するだけでは済まないだろう。 「我らの目的は征服ではないのだということを、よく肝に銘じていてくれたまえ」 『はっ。メサイアの件は保留という事で再度参謀部から提出いたします』 敬礼して消える通信に彼が、デスクのグラスに手を伸ばした。 「我らが地球から完全に独立するなど、できはしないものを」 人類が宇宙に進出してから年月が経つが、今だ人は地球と月から離れた場所で生活を営む事はできないでいた。火星と木星の衛星には氷を発見し、十分な太陽光を確保できるというのに、人は地球上とコロニー、そして月面までしか生活圏を拡大できていなかったのだ。 同様にそれは戦場の宇宙への拡大を意味していた。 「ミネルバの様子は?」 議長の執務室に控えていた秘書達が資料を渡す。地上から宇宙に上がったあともミネルバの活躍には目を見張るものがあった。 「やはり、あの艦は勝利の女神かも知れんな。ニーベルングで合流艦隊を撃たれ、戦力的に不利だった戦況をひっくり返すとは」 「それから、SEEDを持つ者ですが、前大戦時から言葉だけは存在していたようです」 地球から遠く離れた月面近くで繰り広げられた戦争に、地球の人々がどれほど関心を寄せただろう。まして、そこで命を落とした者の事など歴史の1ページにもなりはせず、彼らの慟哭は星となって消えるのだ。 「俺の知っている奴に・・・」 唐突に前方から届くか届かないかの、辛うじて聞き取れる声がした。何を言い出すのだろうかと身構えていたが、彼は気にせずに誰に聞かせるでもなく続けた。 「生まれ育った国を失って、もう何も失いたくないと力を求めた奴がいて」 戦争で被害に遭うのはいつも力のない一般市民だ。シンだって戦争で家族を失った。4年前のあの時にはそんな人々で溢れ返っていた。 「戦争がまた始まって、一人でも力のある奴が欲しくて軍は手当たり次第に人集めをした。だが、はい戦争をやれと言われても、いきなりうまく人殺しができるはずがない」 地球軍の強化兵、エクステンデットは戦争をするために生まれた人体兵器。 「訓練もせずに戦場に放り出されて生きるために必死だったな。失敗すれば待っているのは死だから、誰もが必死になった」 シンはステラ達を思い出す。彼らもあの過酷な環境の中で生き残るために必死だったのかも知れない。薬漬けにされて、戦う事しか生きる事を許されない。 「人を多く殺せば皆誉めてくれて、そこに居場所があると思うのだろうな。どんどん強く、人を殺すのがうまくなっていったよ、それはもう別人のように。まだ子供のくせに」 ステラと一緒にいた少年達。ゲームでもするように戦っていた。 「アンタはどうなんだよ」 「俺はいいんだよ、元々人殺しの犯罪人だ。なのにあいつは普通の少年のくせに、好きな女の子がいても告白できずに、焦って空回りばかりして」 彼らにもそんな日常があったのだろうか。戦闘ばかりの毎日で誰かを好きになる、なんて事が。その子の言動に一喜一憂して。 「へえ、エクステンデットって馬鹿なんですね」 シンが奪ってしまった命はシンと何ら変わらなくて、本当にナチュラルもコーディネーターもエクステンデットも同じだと思い知らされる。 「ああ。命令無視して一人で飛び出したりしてな。その子が好意を寄せていることに気が付かなかったから、こっそり後をつけられた事も知らないで」 どこかで聞いたような、話だ。 シンの焦燥をよそに彼は話しつづける。 スティングとかアウルとかいう奴の話をしているのか? 「それで反対に危険な目にあわせてしまったりな」 違う! それは俺だ。 「後先考えずに動くから、そのうち大変なものを失うんじゃないかって心配だった。君はそうだな・・・そいつに似ているよ」 俺の話をしている・・・。 「戦争がなければ、君達はきっと気が合っただろうに」 なんでそんなこと、今頃! アンタはアスランさんじゃないのに! 今すぐ確かめたい衝動に駆られた。 「アンタ本当に誰なんだよっ!?」 「地球軍パイロット、コードネーム:A・Z。ラボ出身の強化兵さ」 「嘘だっ!!」 シンの叫びと共に、ドシーンと狭い空間が押しつぶされた。 何かが上に落ちたのか空間がひしゃげている。揺れが収まってまず、耳についたのはかすかな音。 「ここに閉じ込められてから5時間だ。君のそのパイロットスーツ、あと何時間持つ?」 「何だよ」 シンは意味が分からずに聞き返す。相手は呆れたと言わんばかりに今や本当に天井かどうか分からない天井を仰いで、掃き捨てた。歪んだ天井にシンのライトセーバーが挟まっている。 音がそこから聞こえるような気がして、それはまるで何かが抜けるような。 シンはサーと血の気が引いていくのを感じた。 僅かだけど空気が漏れている。 「このままだと窒息死するか、凍死するかって話だ」 俺は五体満足だから、この空間の酸素がすべてなくなっても少しは持つ。 だけど、この人は助からない。 「安心しろ。丸腰の君のメットを奪ってまで生き残るつもりはないさ。俺は散々殺してきたしな罰があたったんだろ」 自分だってライトセーバーを無くしているくせに、とシンは言わない。 守りたいから、知りたいから、確かめたいからと言ってはすぐに動いた。 俺はどうして、もっと自分のやったことでどうなるかってこと、考えなかったんだろう。 これも全部、俺がアイツからヘルメットを奪ったから、こんなことになってるんじゃないか。 それを沢山殺してきた罰だって? 「今更そんなこと、言うんですか!」 はは、ちょっと待て、俺。 何を考えているんだ。そいつは地球軍の赤い死神・インフィニティで、ここでいなくなればそれだけ俺たちの犠牲が減るんだぞ。これじゃあ、俺がこの人に死んで欲しくないみたいじゃないか。 「アンタも俺も、散々敵機を落としてきた。だけどそれは、いつか掴む世界のためでしょう!? 何のために貴方は戦っているんです!」 彼が望んだ世界が潰えてしまう。きっとシンと違って、ずっと先を見ていたのに違いないのだ。 「止めろ、酸素が減る」 「散々しゃべっておいてそれはないですよ」 身じろぎした姿から責めるような視線を感じる。宇宙空間の温度はマイナスだ。空調も何もない要塞の残骸の中で急速に冷えていく空間。パイロットスーツに身を包んでいるとは言え、長時間じっとしていてはどうしても身体は冷える。 「足りないのなら分け合えばいいんです」 シンは壁を蹴って、反対の壁の方に向かった。6分の1の重力下で緩やかにカーブを描いてシンは身動きしない敵兵に覆い被さった。 冷たい体。薄い空気にさすがにシンも朦朧とする。なんとか二人が助かる方法を考えるがいい方法が見つからない。確実に気密が確保される事が前提で事を進めようとするとここから動けない。 感覚がなくなった左手とは別に支障なく動く右手がなんとも皮肉だった。 人工の感覚の上を動く空気の流れ。呆然と流れを見送って、空気の漏れる先に目をやるが、それを塞ぐ方法も見つからない。灰色の尖った建造物が突き刺さっていて、押しやれば最後、一気に空気が抜け、彼は死ぬ。 シンは忌々しくその物体を見つめた。 尖った先端は戦闘機の機首のようなカーブを描いていて、戦場で爆散した戦闘機の破片かも知れない。 どこまでも、運命は俺達をあざ笑うのか。 俺やこの人が落とした機体かも知れない。 デスティニー、今どうなっているだろうか。度重なる戦闘にせっかくのトリコロール色だったのが最近ちょっと汚れてしまった最新鋭の機体。そう言えば彼の機体はいつも深紅だったなと思い浮かべる。両翼が赤く光って何もかもを切り裂いていく。コックピットから翼に伸びるラインは、ちょうどあんな感じで。 そんな、馬鹿な。 シンはそれが呼べば飛んでくる機体だとは知らない。 色はすっかり落ちて灰色になっていたけれども、あれは彼の乗機。 これで助かるかも知れない、しかし、よくよく目をやれば、コックピッドの部分は崩れて突き出た隔壁に阻まれて開きそうになかった。そもそも動くかどうか分からない、それでも、助かる確率があるのなら。 あの邪魔している部分さえどければ手動でキャノピーが開くかも知れない。 「ちょっと、待っていてください」 シンは天井に挟まっているライトセーバーを取りに行くが、亀裂に入り込んで、手を伸ばすがギリギリ届かない。 腕がちぎれるかと思うほど伸ばすが、指先に触れる事もできない。 あれがあれば助かるかも知れないのに。 俺にあれを動かす力があれば。 SEEDを信じるんだ。 シンは頭の中心に響く声に目を見開いた。 「アスランさん!?」 振り返るが、気が付いた気配はない。 シードって何だ。 気を取り直して、もう一度手を伸ばす。 気持ち、グラグラと揺れたような気がして、瞬きを繰り返す。 あと少しなのにと焦る気持ちを包むようにSEEDを信じろというアスランの声がして、ライトセーバーが掴めたような気がした。手に感触はないけれど、亀裂に挟まったシンのライトセーバーがスポッと抜けてシンの手の中に飛び込んでくる。 うそっ。 今度は落とさないようにしっかり掴んで、色の落ちたインフィニティに向かう。キャノピーを塞いでいる建材を赤い光剣で切断する。勘で手動の開閉装置を探り当てるとゆっくりとスライドした。慌てて、力なく横たわる彼の傍に向かえば、さっきまで微動だにしなかった体が立ち上がっていた。 「機体から離れろ」 先ほどまでは打って変わった厳しい顔つき。 「なっ!」 驚く間もなく、シンは後から来た衝撃に吹き飛ばされていた。機体が生きていたのか?と振り仰げば色は灰色のままだったが、緑色の機首の頭が増えていた。さらに、びくともしない筈の気密ハッチがチカチカ光っている。 「動くなっ!」 銃を構える姿はプラントのパイロットスーツで。 緑の機体から飛び降りた少年が呼応するように銃を構えていた。 「早くこっちに来い。貴様のデスティニーはちゃんと確保した」 「あっ、イザークさん」 突然の事態にシンは内心オロオロして事態を見守るが、友軍の隊長はそうではなかった。 「貴様、何者だ・・・」 イザークが問い掛けるのは地球軍のパイロットスーツを来た彼。威嚇するように発砲するが動じた様子はなく、弾けたように、もう一人の地球軍の少年が叫ぶ。 「早く来いよ!」 「ああ、悪い。聞こえているよ」 苦笑し、緩く蹴って彼の愛機の元に向かう。シンはシンでイザークが入ってきた隔壁に向かう、二人がすれ違う瞬間。 「本気で来いよ、次から手加減はしない」 「臨むところです。勝ち逃げなんて許さないですから、俺」 「じゃ、休戦解除だな。シン」 振り返るそこには、くるりを身体を反転させて、シンが去っていく後を見つめる姿があった。シンとイザークの前で灰色の機体に乗り込むや否や機体の色が鮮やかな深紅に染まった。イザークもシンも、彼がキャノピーが閉まるまで二人を見ていてその場を動かなかった。 「どういう事だ、アスラン」 「あの人はもう違いますよ」 イザークが零した一言にシンは返していた。 彼はアレックスでもなく、シンと共にミネルバにいたアスランでもない。世界の動きに受身に対処していた彼はもう居ないのだと、その役目を終えて彼の舞台へと戻っていったのだ。一体それがなんなのか、シンには計り知れなかった。それが今の行動にどう結びつくのかも。 彼が見ている未来を一緒に見たいと思ったけれど、シンにはシンの夢があった。 俺、負けませんから。 「まあいい。あとで説明してもらう」 シンとイザークは要塞の残骸から脱出して戦場たる宇宙に戻った。 報告を聞き終えたデュランダル議長がクッションの効いたイスに深く沈みこむ。 「SEEDを持つ者は物体を自在に操れると言う。手を触れずに物を動かし、自らは宙を飛ぶ。我ら人類の進化した姿なのかも知れんな」 窓から見える星空にはちょうど地球と月が映り込んでいた。 議長の独り言に執務室に控えるもの達から返事はない。 「しかしなぜ、その力を平和解決のために使おうとしないのだろうね」 報告書の最後の方に、アークエンジェルの動向があった。デスクにあった報告書を手にとって、軽く叩いた。 遭難!遭難! と書き始めの頃考えていたシーンがこんな形になってしまうとは。雪山遭難だったはずが、あ~あ。このシーンのためにいろいろ伏線を仕込んでいたはずなのに、すっかり何だったか忘れてしますがな、トホホ。しかし、これ、どうやってまとめるんでしょうか>私。
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#blognavi 庭植えしました。&、カフェも。いやー今までずっと鉢のままだったんですね~。それから、種から育てたヴィオラもまだ花一個しか咲いてないけど、蕾もないポットもあるけど、10個程定植です。小さいのはまだポットのままだけどね。何色が咲くのか楽しみです。 今年はヴィオラを24ポット育ててたから、パンジーヴィオアらは買わんぜ!って思っていたけど、家に無い色だからと一つ二つ買ううちに、結局、チューリップの周りに植える為にケースでお買い上げ。あーあ。 来年こそは必要な色は揃えたいと思うけどF1は色が分からないんだよな~。去年のF1アンティークカラーの変わった色も今年はただの赤っぽい。いや、多少ニュアンスカラーか、どうだろう。 カテゴリ [ガーデニング] - trackback- 2012年11月18日 19 29 15 #blognavi